コロナ前から、地方にサテライトオフィスを置くIT企業がちらほらと出てきていました。その中でも「地方創生の聖地」「IT秘境」とまで呼ばれている徳島県神山町をご存知でしょうか。

地方創生のロールモデルとしてたびたびメディアでも取り上げられ、人が人を呼び、次々移住者が集っています。

過疎地であった神山町はこの10年間で何が変化したのでしょうか。

今回は徳島県神山町についてご紹介します。

徳島県神山町は、徳島市街から国道438号線をクルマで約1時間弱ほど走ったところにある、人口約5,400人の山間部の町です。

1955年に人口2万人の町としてできた神山町ですが、年を追うごとに人口が減り続け、当初の約4分の1にまでなってしまい、ついに限界集落と呼ばれるようになっていました。

しかし、東京や大阪のITベンチャーが新たな働き方を模索して、サテライトオフィスを開くようになりました。2010年以降、すでに計16社の企業が神山に集積しており、古民家を利用したサテライトオフィスを相次いで開設することで注目を集めています。

では、なぜ徳島の片田舎にこれほどITベンチャーや若者が集まっているのでしょう。

IT企業が集まった最初のきっかけは、町内全域に光ファイバーが敷設されたことです。まずネットワーク環境が整備されたことが大きな転換となったのです。

その後、Sansan社プラットイーズ社(渋谷本社、番組配信などの映像コンテンツの会社)が神山町にサテライトオフィスを設置しました。Sansanは、この神山の取り組みによって、多様化する新しい働き方が大きく報道され、2012年に日本テレワーク協会主催の「第12回テレワーク推進賞 優秀賞」も受賞しています。

この2社を筆頭に、続々と神山町にIT企業が訪れるようになりました。

神山町がこれほど地方創生の先駆けと言われるようになったきっかけは、外から来るものを拒まず、民間企業とうまく手を組んだことだと言われています。

民間企業が主導し、新しい働き方やそれを体験できる滞在拠点がどんどん生まれていき、成功事例が生まれていったのです。

例えば、サテライトオフィスに興味があっても、いきなり神山町に作ることのできる企業はそう多くありません。

そこで、お試しでオフィスとして使ってもらうための施設を建設したのです。イベントなどが行える多目的コワーキングスペースや、テレビ会議が可能な会議室、専用の打合せスペース、共同のキッチンやシャワールームなどが備えられており、サテライトオフィスを導入したいと考えている企業をサポートし、受け入れる体制を整えているのです。

全国でも地方創生を目指し四苦八苦している地域は少なくありません。神山町のアプローチを参考にし、民間企業と地域、行政が一体となり、知恵を絞り合うことが重要なのではないでしょうか。